経営お役立ちコラム
2025.09.19 【SDGs】
中小企業と公正な事業に関する人権
-SDGsの目標と尊重される人権及び法令遵守事項-
1 公正な事業に関するSDGsの目標・尊重されるべき人権
企業が社会の中で存続し続けるためには、事業を公正に行っていくことが必要不可欠であり、このことは企業規模によって変わるものではありません。
事業の公正さを欠いた結果、社会的信頼を失って回復困難な業績悪化を招き、多額の損害賠償や制裁金の支払を余儀なくされることがあります。さらには、役職員が処罰される事態に発展することもあります。そうした事態となってしまうと、財務的基盤が十分に確立されていない中小企業では、不公正な事業の結果として被る損害に耐えることができず、企業存続の危機をも招きかねません。
そのため、中小企業であっても、企業活動を行うにあたり、事業を公正に行う必要があり、国際人権規約や日本国憲法が各種人権を尊重する趣旨を理解してSDGsの目標・ターゲットの内容を実現しようと努めることが、極めて重要となります。
公正な事業に関して尊重されなければならない人権としては、国際人権規約における「私生活・名誉及び信用の尊重」(B規約17条)、「法の下の平等」(B規約26条)、日本国憲法におけるプライバシー権(憲法13条)、法の下の平等(同法14条)、知る権利(同法21条)、財産権(同法29条)といった権利があります。また、SDGsの目標では、「12 つくる責任つかう責任」、「16 平和と公正をすべての人に」が関連します。
2 公正な事業に関するSDGsコンプライアンス(法令遵守事項)
公正な事業環境を守るためには、様々な法律があり、公正な事業が問題となる主な場面に着目すると以下の観点が重要となります。中小企業の立場では、こうした法律の内容を理解して遵守することが、最初に取り組むべき事柄となります。
- (1)反社会的勢力の排除:全国の都道府県の定める暴力団排除条例
- (2)贈収賄(公務員・みなし公務員との付き合い):国内の公務員及びみなし公務員について刑法(贈収賄)、外国公務員等に対する不正な利益供与について不正競争防止法及び現地の腐敗防止関連の法律(加えて国内や現地以外の第三国の腐敗防止関連の法律が一定の関連性が認められる場合、国内の公務員などに域外適用される場合もあります。)
- (3)入札談合・カルテル規制(公正かつ自由な競争の確保):独占禁止法、現地の競争法の域外適用
- (4)個人情報保護(個人情報の適切な利活用):個人情報保護法、現地の個人情報保護法(GDPR等域外適用されるものもあります。)
- (5)知的財産権(知的創造に関わる活動と戦略、違法コピー、商品形態の模倣、営業秘密):特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法等の各種知的財産法及び不正競争防止法
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